Valentine Kiss! - 3/5

 

[スウィートハート【直助くんと優馬くん】]

「あー!それ、GODIVAじゃん!俺にはダメって言っといて、自分はもらって来てんの?!」
その日、バレンタインデー。VAZZYの共有ルームで、本日頂いてきたプレゼントをテーブルの上に広げながら、俺はふと、ひとつだけ大事そうにキッチンのカウンターに載せられていた有名チョコレート専門店の小さな袋を見つけて、思わず声を上げた。お茶を入れに、とキッチンへ姿を消していた優馬が、俺のそんな声にギョッとして顔だけを出してくる。
バレンタイン、とはいえタレントである俺たちは、ファンからはチョコレートなどの生ものの類いは受け取らないようにきつく言い含められていたのだ。だから今日は、大学でも仕事先でも、チョコレートや食べ物系は丁重にお断りをしてきた。優馬もそれは、同じだと思っていたんだけど。
「違うって、これはファンからじゃ無いからノーカン」
俺の言葉には、そんな風に言い返して、優馬はトポトポと、紅茶のティーバックを並べたマグカップに、順番にお湯を注いでいく。マグカップからはふよふよと温かそうな湯気が上がって、紅茶のいい香りがこちら側まで漂ってくるようだった。
「ファンからじゃないって、じゃあ誰からだよ」
「えー?」
紅茶を運んできた優馬の様子が、ご機嫌で、ニコニコで、鼻歌まで聴こえてきそうだったから余計に気になってしまって、俺はついつい追求してしまう。
「内緒」
「えー!なんだそれ、ずっるいの‼︎」
「ナオだってさっき、歩さんに貰ってたじゃん」
「あれはこの間買い物に行ったお礼だって。バズとロックに似てるチョコレートを見つけたから、ってくれたの」
「そーなんだ」
紅茶をすすりながらクスクスと笑う優馬がまた、小憎たらしくて、俺はさっき歩さんから貰ったチョコレートの袋を、優馬の物らしいGODIVAの袋の隣に並べる。中身は、オレンジ色のリボンが掛けられた小さなネイビーの箱で、リボンを解いて箱を開くと、白と黒の猫が二匹、こちらをじっと見つめている、可愛らしいチョコだった。思わず「可愛い!」と声を上げて、これは写メに撮ってあとでみんなに見せようかなって、俺は鞄の中に入っているスマホを探しにいく。
「可愛いね」
「へへん。あげないからな」
「……誰もとらないよ」
俺は席を立ったその流れで、同じようにチョコレートの封を開ける、優馬の様子を横目でチラリと覗き見した。キラキラと宝石みたいに輝くピンク色の派手なハートの形のケースに入った、沢山の小さなハート。見るからに、もう、ただの友だちから貰ったチョコには見えないんだけど。
「そんだけ愛が詰まってて、本命じゃないの?」
「………あ、あはは……あげないよ?」
「誰もとらないって」
優馬はそう、照れくさそうに笑って、変わらずご機嫌そうに、ケースのチョコレートを摘んでいた。

 

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