ワードパレット『color』 - 6/13

[chapter:5.ぴんくいろ(歩ルカ)]
チョコレート、指先、駅

二人っきりのバスタイムは秘密の時間だ。メンバーにも幼馴染にも相方にも、もちろん彼氏にだって内緒。たまに仕事が早く終わった日なんかに示し合わせて、一緒にお風呂に入るだけ、それだけの関係である。だって、お風呂、一人で入るよりも誰かと一緒に入った方が楽しくない?温泉みたいでさ〜。そんな事を言って俺は中学生くらいまでがっくんと一緒にお風呂入ってたんだけど流石に向こうから断られる事が多くなってやめちゃったんだ。でもその名残で、今でも恋人が出来たら一緒にお風呂に入る事が多いし、こうやってただ一緒に友達とお風呂に入る事だってある。歩くんはがっくんにも内緒の風呂友だ。高い位置で髪の毛を纏めて、お揃いで買った色違いのヘアバンドを着けている。俺はお揃いとかチョー好きなんだけど、歩くんだってこういった友人は新鮮らしくて、シャンプーとかボディクリームとか、パジャマとかまで、お揃いで買う事に躊躇いが無くて嬉しくなってしまう。
お湯は綺麗なチョコレート色で、甘い匂い付き。これも、先日仕事の帰り道に一緒に買ってきたアメリカンなデザインのパッケージの入浴剤で、歩くんは「泡風呂じゃないのか……」ってシュンとしていたけど、俺は結構、この色も香りも気に入っている。
順番に身体を洗って、揃って狭いバスタブに身を沈めたら、自然と体育座りで膝を突き合わせる形に収まる。寮のお風呂は、それこそ一人暮らしの物件にしてみれば広い方だと思うんだけど、流石に男二人で入るには狭くて、そういえば一緒にお風呂に入るたびに「温泉行きたいねぇ〜」なんて話をしている気がする。歩くんの渋い趣味はここでも健在で、「近場だったら熱海か箱根か」なんて乗ってきてくれるんだけど、お互いに忙しくて中々実現する機会は無い。
首元までしっかりお湯に浸かって、ただそこだけ覗いた歩くんの綺麗なお顔。ツンと形の良い鼻先を指先で突くと、歩くんが猫ちゃんみたいに、くすぐったそうな顔をする。
元々、人見知りのけがあって、警戒心の強い歩くんだけど、一緒に過ごしてきた三年の間に俺にも大分慣れてきたのか、こうやってボディタッチにも抵抗が無くなってきたようでそれも嬉しい変化。ピンク色の唇は湿気で艶々していて美味しそうで、思わずチュっとキスをしてしまう。そんなものも俺の悪ふざけなんだけど、嫌がらないで受け入れてくれて、それどころかチュッチュって軽いキスを返してくれる仕草はもう、完全に猫ちゃんだ。可愛くて仕方がない。綺麗なお顔の、長い睫毛に縁取られた瞳が、まぁるく見開いてぱちぱちと瞬くのを「綺麗だな」って見ていると、歩くんははた、と思い出したように小さな声で呟く。
「そういえば、駅前に出来た甘味屋さんに行きたい」
「えっ、今?今それ?」
「あぁ。ルカと、一緒に行きたいなって」
結構仲良くなったとはいえ、こうやって歩くんの方からデートにお誘いしてくれるのは珍しくて、だから俺はそのお誘いが嬉しくて、思わずばっと、その華奢な腕を掴んでしまう。
「行こう!甘味屋さん!俺お団子食べたい!」
「今だったら花見に丁度良いと思う」
「俺この前の撮影からずっとお団子食べたくてさぁ〜」
先日の、甘味王国の撮影で、ロクダンとヴァジーのモチーフがお団子だったのだ。撮影中から歩くんはずっとお団子食べたいって言ってて、流石にそのあと食べてるだろうけど、俺もつられて、お団子が食べたいなぁって思っていたのだ。来週には桜が満開になるらしいし、歩くんの言う通り、満開の桜の下で花見団子なんて最高じゃないのか、って思ってね。
「お団子も食べたいけどお花見もした〜い!」
「……一緒に翔にお願いしに行こう、花見がしたいって、」
言って、ぶくぶくと歩くんがほっぺたまでお湯に沈む。
お花見、楽しみだなぁって、俺の頭の中は既にもう、桜が満開であった。

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