ふと空を見上げたら、夜空に、たくさんの星々が瞬いていた。
その中で一番綺麗な星を見つけたら君にあげよう。
一番大切な君に、一番綺麗なお星様を。
「翔の宝物はなあに?」
何度目の、行為の後だったろうか。既に、日付も変わって真夜中をとうに超えた午前2時、ベッドの中で僕を見つめる一対のアメジストは、まだちっとも眠く無さそうで、羨ましい、なんて、ぼんやりとその輝きを眺めている。流石にもうお終いかな、と、布団の中でうとうとと微睡んでいたところだった。夢うつつ、そんな優しい時間の中で聞こえる、君の声は子守唄のようだ。ベッドの中で眠たげに目を擦る僕を捕まえて腕の中に抱きしめて、孝明は僕にふと、そんな問いを投げかけた。
「宝物?」
「そう。翔の宝物」
「…………たからもの、」
そう、問いかけられてすぐに答えを出せる人なんているのだろうか。
そんな事を考えながら僕は、ベッドの中へと沈んでいく。
「ありゃ、寝ちゃうの?」
「……う、ん……、」
まだ、頑張って起きていようと思ったのに。僕の決意はびっくりするほど脆い。
心地良い疲労感と、温かな君の腕の中に包まれて、襲ってくる眠気には勝てないみたいだった。今日は仕事が長引いてしまって、君の部屋を訪れるのが、遅くなってしまったのだ。終電近い電車に乗って、駅からは駆け足。自室のある11階をスルーして、指先は躊躇いなく、君の部屋がある10階のボタンを押していた。日付が変わりそうな時間に君の元へやって来た僕は、テーブルの上に用意されたケーキにも、ワインにも、手を付ける前に、出迎えてくれた孝明を捕まえてベッドへ引き摺り込んだ。それがちょうど、日付が変わる瞬間。僕の誕生日の零時ぴったりで、君の「お誕生日おめでとう」が間に合った事が嬉しくて嬉しくて、そのまま、その唇を奪ったのだった。息つく暇も無いくらいの激しいキスに、二人で、苦笑してしまう。だって、何よりも真っ先に、僕が欲しいものはこれだったから。君が渡しそびれたって笑っていたプレゼントは、明日起きた時の楽しみに取っておこうねって、ベッドサイドに置いてある。せっかく用意してくれたケーキとワインも明日の朝一緒に、美味しく頂くとして、今はただ、君の温もりに包まれていたかった。
幸せな誕生日の幕開けだった。誕生日当日の夜は、ユニットのメンバーが祝ってくれるから、それもまた楽しみだったんだけど、君と会えるタイミングはここしか無かったから、誕生日を迎える前日の夜は空けておこうねって約束をしていたのだ。
宝物、という言葉を心の中で反芻して、僕の中に思い出すのは、大好きな仲間たちの存在と、彼らと共に立つステージ、大切な相棒であるヴァイオリン、ファンのみんなの歓声、それから、
うっすらと開いた瞼の向こう、
夢に落ちる最後の瞬間に見つけたのが、君の笑顔で僕は嬉しい。
「お誕生日おめでとう、おやすみ、翔」
大切な大切な、僕の宝物。愛しい、何よりも。
柔らかな髪を撫で付けて、心地良い香りに身を委ねる。
かけがえの無い宝物を腕に抱いて、僕は今夜、幸せな夢を見る。
『翔の宝物はなあに?』
僕の宝物、それは君だよ、孝明。

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