HAPPY HAPPY BIRTHDAY‼︎【2020誕生日SSまとめ】 - 5/12

 

ネイルの塗り方を教えてくれたのはルカさんだ。いつも爪先までお洒落にしているから、「可愛いですね、爪」って言ったら「優馬くんもやってみる?」と誘われて、その日俺の爪はシックなブルーグレー色に染められた、ルカさんの手によって。10本の指を塗り終えて満足そうに笑ったあなたは、キラキラのビビッドピンクのボトルを俺に差し出してニコリと微笑む。
「俺にも、塗って?」って。
元々、細かい作業は得意な方だ。最初の頃こそはみ出しはしたものの、何度か繰り返していくうちに俺も慣れてきたのか、現在ではルカさんの10本の指を任せてもらうまでに至っている。
本日のオーダーはペディキュア。足の爪10本。「優馬くんの好きな色に染めて」って言われた俺は、ルカさんが所持している数多くのネイルカラーの中から、些か迷いつつも鮮やかなイエローグリーンを手に取った。
「優馬くんの、そういうところ好き」
「えぇ?……だめでした?」
「良いよ。足の爪は見えないし。今日はトクベツ」
クスクス笑う、すべすべの足を手に取って、指の間をほぐしていくようにクリームでマッサージをして行く。こんなことをしなくてもこの人の足は手入れが行き届いていて、血行も良いんだけど。ルカさんが気持ち良いって言ってくれるから、何となく恒例になってしまっているのだ。ハンドネイルの日は手のマッサージ、ペディキュアを塗る日は足のマッサージって。
今日は、しかも。特別な日だったから、それはもう念入りに足先まで揉みほぐしていく。
マッサージが終わったら今度はネイル。指の一本一本、はみ出さないようにそっと、刷毛を走らせる。よく見てみると、このイエローグリーン、小さな星のラメが入っているのだ。そんな細かいところまでお洒落で可愛いなって思っていると、ソファに座って無防備に足を投げ出すルカさんが愉快そうに笑っていた。
「くふふ……至福の時間」
「動かないでくださいね、もうちょっとで終わりますから」
「はぁい」
右足を乾かしている間に左足も。その間、優しげな沈黙が二人の空間を包み込む。
二人の、時間は、本当に意外なんだけど、会話が少ないと思う。いつも賑やかなこの人が?!と普段のルカさんを知る人が見たら驚きで腰を抜かしてしまいそうなものだけど、俺と一緒のルカさんはいつだって、大人で、優しくて、思いやりに溢れた、そんな素敵な人だった。
ニコニコ微笑んで俺を見下ろす、その瞳が好きだ。
だからそっと、ペディキュアの乾いた右足の甲に口付けをして、俺も微笑みで返す。
「………おっ、と?」
「お誕生日おめでとうございます、ルカさん」
「……このタイミングで?」
「そう、それで。これは、俺からのプレゼントです」
イエローグリーンのペディキュアを塗った爪先、その足首にキラキラと光るピンクゴールドのアンクレットを取り付ける。ルカさんの好きなお星さまモチーフ、それから、所々にピンク色の石が埋め込まれたそれを見て、目を輝かせるあなたが愛おしい。
「ずっと身につけていてもらえるもの、何かなって考えてて」
「それで?アンクレット?」
「えぇ。もちろん、激しいダンスの時とかは、危ないから外してて欲しいんですけど」
ずっと、付けててくれますか?甘えるように、そう言ってしまう俺は多分ズルいと思う。
それでもルカさんは目をうるうると潤ませて、ジッと俺を見下ろしていた。
「優馬くんが?俺に?俺のためにこれを選んでくれたの?」
「そうです、いろいろ、迷ったんですけど……」
「どうしよう、めっちゃ、嬉しい……」
あなたは一層、美しく微笑んで、その腕の中に俺を閉じ込める。ぎゅっときつく。お風呂上がりの甘やかな香りが、俺の鼻先をくすぐった。パッと目を離すと、ふわふわと何処かへと飛んでいってしまいそうになるこの人を縛り付けておくものが欲しくて、そんな事を考えながらこれを選んだのは、ルカさんには内緒だった。のに、
「足枷みたいだね」
「え」
「俺、優馬くんのそういうところ好き」
嬉しそうに、うっとりとそう言うあなたを見つめて、俺は目を丸くする。
……多分この人には、一生敵わないんじゃ無いかって思うわけだ。

 

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